ある日 目がさめたら、
ひろくんは ぽちになっていました。
ぽちは、ひろくんのいえでかっている犬です。
でも ひろくんとは あまりなかがよくありません。

「どうなっているんだ・・・。」
かがみにうつったすがたは、まるいかおにまるいはな
まるいたれた耳、むくむくのちゃいろ。
どうみても ぽちのすがたです。
そのとき へやに、ひろくんそっくりな男の子が
はいってきました。
「わん わん わん!」とその子は ほえました。
でも よーくきいてみると
「おい ひろくん。犬になったかんそうは、どうだい?」
はなのあたまが ちょっとくろいその子は、
なんと ぽちでした。

「ぼくは きみに、いいたいことがあるんだよ。」
ぽちは、犬になったひろくんをだきあげました。
そして たれた耳をふたつ、あたまの上で
ひもでむすびました。
「いたい いたい なにすんだよー!」
犬になったひろくんは、さけびました。
「きみがいつも ぼくにやっていることじゃないか。」
こんどは えさと水のいれものを、たかい
たなの上におきました。
「ひろくんのママがいないとき きみはどうして、
ぼくがとどかない高いところに ごはんをおくんだい!」

ひろくんのすがたをしたぽちは、
かなしそうな目をしました。

ひろくんは 犬になったむくむくのちゃいろのかおを
たたきました。

ちゃいろのくちゃくちゃのかおを、もっとくちゃくちゃにして
どうしよう どうしよう
これからは 大すきなテレビゲームもできないよ!
どうしよう どうしよう
れいぞうこの中にある おやつのケーキも出せない!
どうしよう どうしよう
トイレでおしっこ どうやったらいいんだよー!
ひろくんは あたまをかかえて、まるまりました。

そのときです。にかいから「がたーん!がたーん!」
大きなおとが、きこえました。
きょうは、パパもママも でかけていないはずです。

ぽちとひろくんが、二かいに かけのぼると
まどが、こわされていました。
そして ドアをあけると、ママのたいせつな
ネックレスをもったどろぼうが、たっていました。
「おやおや ぼうや。ひとりで、おるすばんかい。」

どろぼうは、にやっとわらって
ひろくんのすがたをしたぽちを つかまえました。

「きゃーんきゃーんきゃーん!」ぽちがなくと
「へんなやつだな。犬のまねなんかして。」
どろぼうは、らんぼうに テープを口に
はりつけました。
「やめろー ぼくのぽちに なにをするんだよー!」

ぽちのすがたをしたひろくんは、どろぼうに
とびかかりました。

「ひえー!犬が しゃ、しゃべった。」
どろぼうは、ひっくりかえりました。

ひろくんは、どろぼうの上にのっかって
「ぼくは、にんげんだ。ママのネックレスをかえせ!
かえさないと、かみつくぞ。」と
きばをむき出して、うなりました。

どろぼうは、ポケットから ネックレスをなげ出して、
まどから あわててにげていきました。
「ぽち だいじょうぶ?」
ひろくんは、むくむくのちゃいろの手で、
ぽちのテープをとってあげました。

「ひろくん ありがとう。」

ひろくんのすがたをしたぽちは、ポロポロなみだを
ながしました。

「ぽち いままでごめんね。ぼくね、ぽちのこと
きらいだったわけじゃないんだよ。」
といって、ぽちの手をペロペロなめました。

「ぽちがうちにはじめてきたとき、
しっぽをふってぼくにとびかかってきたよね。
ほんとうは、こわかったんだ。
だから はじめはそばにもいけなくて、
ママにごはんをたのまれると あの高い
たなの上にしか おけなかったんだ。」

「じゃぁ どうして耳をひもでゆわくの?」
ぽちがきくと
「だって ぽちがねていたとき、まちがってふんだら
かみついただろ。
だから それからは、ふまないようにやったんだ。」

ひろくんのすがたをしたぽちは、にっこりわらって
りょう手でやさしくだきしめました。
ひろくんとぽちは、いつのまにか ねてしまいました。
「ただいま。あら ねてたの。めずらしいわね。
ぽちをだっこしてねてるなんて・・・。」

ママが かいものから、かえってきました。
「ねえねえひろくん そのあたまなぁに?
ひもでゆわいちゃって、まるでぽちみたい。」
ママは けらけらわらいました。

どうやら もとにもどったようです。

ひろくんとぽちは、うれしくてだきあいました。
これからは、ほんとうのなかよしのともだちです。

        おしまい




あおき まぁ プロフィール

東京都 江東区在住

MIYABIで創作童話に取り組んでいます





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